2 骨腫瘍病理各論 85

伴う場合もある。軟骨細胞にはときとしてgrade 1の軟骨肉腫程度の異型性変化もみ
られ,胞体内にPAS陽性の好酸性封入体様構造物が報告される時もある。軟骨帽直
下は軟骨内骨化を示す場合があり,骨性部分の髄腔は脂肪髄もしくは稀に造血髄であ
る。肉眼的・顕微鏡的に病変はひとまとまりで,表面は骨膜の線維性結合織で覆わ
れ,本体から切り離された軟骨組織が周囲の軟部組織内に存在する場合はむしろ悪性
を考慮する。

病変の成長増大は若年期にほぼ限られ,もし青年期を過ぎてから腫瘤が大きくなっ

てきたら悪性化の可能性を考慮する必要がある。外傷や放射線照射に続発する骨軟骨
腫が知られているが,postradiation sarcomaにまで進んだ例はいまのところ報告が
ない。単発の場合は悪性化は極めて稀である。二次的悪性化については多発性病変の
項でも述べる。

画像上,突出性病変そのものと基盤骨本体との間に健常部からの骨皮質の線が追え

る時,すなわち,突出部と基盤骨との間に骨皮質による境界線が存在し,突出部の骨
髄腔と基盤骨本体の骨髄腔との間に連続性がない時は,傍骨性骨肉腫や骨化性筋炎等
の他の骨膜性・傍骨性病変の可能性を考える必要がある。病変部の骨梁間が脂肪髄や
造血髄ではなく線維性の結合織や紡錘形細胞で占められている場合も骨軟骨腫ではな
く傍骨性骨肉腫の可能性を考える必要がある。骨軟骨腫の直上に二次的に形成された
滑液包が,出血等によりもし急速に大きくなると,臨床的に軟骨肉腫と見誤られる場
合がある。爪下外骨腫subungual exostosisは趾骨末節,特に母趾末節骨遠位にみら
れる骨性隆起で,bizarre parosteal osteochondromatous proliferation(Nora's lesion, 
BPOP)も主として手足の骨の傍骨性病変であるが,共に典型的な骨軟骨腫とは画像
所見が異なり,むしろ骨膜性 ・傍骨性の骨形成である。骨軟骨腫は骨幹端部に生じ
るのが通例で,もし骨端部に骨性の隆起がみられ,しかも身体の片側に多発した場合
は,珍しい疾患ながらdysplasia epiphysealis hemimelicaの可能性が考えられる。骨

図1 Osteochondroma

軟骨帽はときに判然としなくなる。

図2 Osteochondroma

軟骨帽直下の軟骨内骨化と脂肪髄。