84 Ⅷ 骨腫瘍の病理

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骨腫瘍病理各論

A 原発性骨腫瘍 

Primary bone tumors

1 軟骨形成性腫瘍 Chondrogenic tumors

軟骨形成性腫瘍は原発性骨腫瘍の中では骨形成性腫瘍に次ぐ大きなグループをなし

ている。軟骨性腫瘍ではとりわけ画像所見が大切で,例えば通常型軟骨肉腫と内軟骨
腫との鑑別や骨軟骨腫の悪性化の判定等では,画像所見による病変の全体像の読みが
決定的な役割を果たす場合も多い。軟骨性病変の組織学的良悪性の判定は難しいこと
が多いが,一般的には,①手足の小さな骨の小さな病変は概して良性,②大腿骨・上
腕骨・骨盤骨・肋骨などの大型の骨での大きな病変は多くの場合悪性という傾向がある。

 良性 Benign

1-1 骨軟骨腫 Osteochondroma 9210/0
最も頻度の高い良性骨腫瘍である。骨突出部の表面に軟骨帽 cartilaginous cap を

被るのが特徴とされるので,良性軟骨腫瘍の代表例のようにみなされているが,実際
には病変の基本構造は軟骨が隆起するというよりも海綿骨から連続性に突出した骨本
体の隆起であり,陳旧化したものでは表層の軟骨がみられなくなっている例もある。
単発例と多発例とがあり,いずれも軟骨帽の軟骨においてEXT1遺伝子もしくは
EXT2遺伝子のbialleic inactivationがみられ,両者共に腫瘍性と考えられる。とき
にみられる常染色体優性の遺伝性多発性外骨腫 hereditary multiple exostosisは,他
の骨格異常を伴うことが多く,二次的悪性化の頻度が高いとされる。

IDH1(isocitrate dehydrogenase 1)もしくはIDH2(isocitrate dehydrogenase 2)

の遺伝子突然変異は認められない。

1-1-1 単発性骨軟骨腫 Solitary osteochondroma 

図1・2

10〜20歳の長管骨骨幹端に好発し,大腿骨遠位・上腕骨近位・脛骨近位の順で全

体の約50〜60%を占め,肩甲骨・腸骨等の扁平骨にもみられる。頭蓋骨や顎骨にみ
られる骨性隆起は,いわゆるcancellous typeのosteomaの中に含まれる場合が多
い。近接する神経・血管・腱を圧迫しない限り,局所に骨性硬の腫瘤を触れる他には
自覚症のないのが普通で,稀に茎の部分で骨折すると痛むことがあり,腫瘤に伴う二
次的な滑液包の形成に基づいて痛みや出血・血腫が生じる場合もある。

肉眼的に中心部に骨,辺縁部に軟骨,と規則的にzoneをなし,薄い軟骨帽が突出

部の外縁に配置される。表面の軟骨層は成人の場合,厚さが1cmを超えることは稀
である。軟骨が消失し骨性の隆起のみの場合もある。腫瘤形成に伴ってときに軟部に
二次的な滑液包が形成され,さらにはsynovial chondromatosis様の軟骨性遊離体を