ゾロミドもアルキル化薬であることから,Hegiらは,Stuppらが行った臨床試験において
MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化を検索した。全登録症例573例中307例で検
体が集められ,うち206例でメチル化の有無が検出された(全体の36%の症例)。206例中
45%の腫瘍においてMGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化が確認された。メチル化
症例のうちテモゾロミド治療群の生存期間中央値は,21.7カ月であり,放射線治療単独群
の同中央値15.3カ月に比べて統計学的な有意差が証明された

10)

。一方,非メチル化症例群

では,テモゾロミドの有無による全生存期間の差は小さく,有意差はなかった。
 また,Riveraらは,後方視的なデータ解析ではあるが,初発膠芽腫225例のMGMT遺
伝子プロモーター領域のメチル化を解析した。DNAアルキル化薬以外による治療を受け
た症例,つまり,放射線単独治療においてもMGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化
の有無が生命予後と関係することを示した

11)

。その後も数多くの研究においてMGMT遺

伝子プロモーター領域のメチル化の有無が予後と相関することは示されているが,その機
構が本当にMGMT遺伝子発現の抑制を介するものなのかどうかなど,その詳細は今後の
研究結果を待たなければならない。神経膠腫におけるMGMT遺伝子プロモーター領域の
メチル化は,ニムスチン(nimustine:ACNU)やテモゾロミドを含むアルキル化薬に対す
る腫瘍の治療効果の有用な予測因子のみならず,放射線治療も含めた予測因子もしくは予
後因子の一つである可能性も議論となっている。ただしMGMT遺伝子プロモーター領域
のメチル化を判定する方法はさまざまなものが提唱されており,標準化された手段はない
ことも記憶に留める必要がある。
 成人膠芽腫22例について,2万個以上の遺伝子が網羅的に解析された結果,先に述べた
IDH1遺伝子変異が膠芽腫の12%に認められることが発見された。詳細にみると,この遺
伝子異常は続発性膠芽腫の大多数に認められるが,原発性膠芽腫にはこの変異はほとんど

10

成人膠芽腫

1

Recursive Partitioning Analysis

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