患者の安全を常に考える確実な手術手技を提供す
ることは,最も大切なことです。手術を勝負に例え
てはいけませんが,胃癌手術における手術関連死亡
は「敗北」です。ちなみに国立がん研究センター中央
病院では「胃癌患者を治すために」積極的に拡大手術,
化学療法後の手術などを行っていますが,2009年
から2013年の手術関連死亡割合は0.05%(1/1937)
です(

表3

)。

 安全な手術の要件はただ一つ「愚直なまでに基本・
確認行為を忠実に行う」ことです。手術は決して急
いではいけません。一つひとつの手順を確認しなが
ら,たんたんと進めると,結果として手術も早く終
わることになります。
 完璧な人間はいないことを認め,他人から間違い

を指摘してもらう環境を整備してもらうことも大切
です。特に,手術を客観的に見ていて,チェックリ
ストを使用して常に確認している看護師の意見は尊
重すべきです。

「ガーゼ枚数が足りない」などの指摘

は,看護師が正しいことがほとんどです。もちろん
盲信はいけません。
 自分を信用しなければ手術はできませんが,心の
中では「看護師,自分,助手」の順に信用するように
言い聞かせていつも手術しています。他人から間違
いを指摘してもらえる環境は,楽しみながら手術が
できる環境です。このような環境を指揮者あるいは
演奏者として楽しみながら手術し,一人の患者を治
すことは,外科医冥利につきると思います。

圧倒的に低い手術死亡率

表3

国立がん研究センター中央病院胃外科

日本胃癌学会全国胃癌登録

胃切除患者数

手術関連死亡

手術関連死亡率

2009

483

0

2010

389

2011

366

0

2012

342

0

2013

357

0

2009-2013

1937

1

0.05%

胃切除患者数

手術関連死亡

手術関連死亡率

2002-2006

87339

574

0.66%

Zero mortality

1.3

6

1.3

 Zero mortality