肝・十二指腸を覆う腹膜の剥離

図46

 オクトパス鉤(大)を尾状葉に深くかける。腹部食
道右縁から大動脈裂孔の右側の横隔膜脚に沿って後
腹膜を切開する(

図43

)。下大静脈方向に下大静脈

のやや手前まで(意外と近いので決して下大静脈を
損傷しない。当院では経験はない)後腹膜を切開し
ていく。この際,第2助手が胃を尾側に牽引,後腹
膜の切離端(胃・膵ひだ右葉)を第1助手が右手バブ
コック鉗子と左手九爪鑷子で把持し,上方,尾側に
牽引すると切開しやすし,次の操作の「胃膵ひだを
右側からめくり上げる」も容易となる(

図44

)。

 右脚の縁が露出されたら,術者は左手ライビンガ
ー鑷子でこれを把持し頭側に牽引する。横隔膜脚前
面と噴門の間は疎な結合組織のみなので,右脚に
沿って電気メスでトレースしていくと右脚全体が露

出する。引き続き脚に沿って左脚の前面まで剥離を
しておく(

図45

)。結果的にここがNo.9リンパ節の

上縁となる。早期胃癌手術で温存する迷走神経もこ
こに見いだせる。

 第2助手は左手で十二指腸前面を軽く下方,尾側
に牽引し十二指腸の上縁のラインが肝・十二指腸靭
帯と直交するようにする。術者は肝十二指腸靭帯の
前面腹膜に郭清範囲を逆コの字に切開する(

図46

)。

 第1助手は右手で胃を軽く左側に牽引,左手五爪
鑷子で小網を軽く左側に牽引する(右胃動脈をつか
んでもよい)。術者は五爪鑷子で逆コの字に切開し
た腹膜を把持し,左側に牽引しつつ固有肝動脈血管
前面を

トレース

し,肝十二指腸靭帯前面の脂肪組織

網嚢後壁の後腹膜の切開

肝・十二指腸靭帯の郭清

右胃動脈

固有肝動脈

第1助手 

第2助手 

逆コの字切開

53

3

3.1

 胃全摘術(D2)