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  第Ⅱ部 病理組織学的事項

 

3) 神代正道:早期肝癌と類似病変の病理.医学書院,東京,1996

 

4) International Working Party:Terminology of nodular hepatocellular lesion. Hepatology 

22:983—993, 1995

 

5) Takayama T, Makuuchi M, Hirohashi S, et al:Early hepatocellular carcinoma as an 

entity with a high rate of surgical cure. Hepatology 28:1241—1246, 1998

肝内胆管癌(胆管細胞癌)

1概  要
 肝内に発生した胆管上皮に似る,あるいはそれに由来する細胞からなる上皮性悪性腫瘍。
 肝内に灰白色,充実性の,硬い腫瘤を形成する。胆管内腔で腫瘤状に発育するものや,門脈
域に沿って浸潤性増殖を示すものがある。腫瘍は,肝全体に比し,さほど大きくならない。ま
た,出血や壊死をみることは少なく,肝硬変の併存は少ない。肝臓の被膜直下に存在する腫瘤
は,多くの転移性肝癌と同様に癌臍を形成する。
2肉眼分類(p. 17を参照)
3組織分類
 胆管上皮に似た上皮で覆われた腺腔を形成し,線維性間質がよく発達しているものが多い。
 肝内胆管癌(胆管細胞癌)は高分化型,中分化型,低分化型腺癌に分けられ,さらに特殊型

(亜型)を区別する。同一の腫瘤中で2種類以上のパターンを示す場合,量的に優勢(predomi-

nant)な組織像を以て分類することを原則とする。

腺癌

 管腔構造をとることが多いが,時にコード状あるいは乳頭状の増殖を示す。腫瘍細胞の大き
さや量は種々で,立方状,円柱状ないし多型性で,核はクロマチンに富み,核小体は目立たな
い。胆管上皮に似ており,腫瘍細胞内あるいは管腔内に必発的に粘液産生をみる(写真61,
62)。周囲に種々の程度の線維性間質を伴う。腫瘍の多くが硝子様線維化で占められる例もあ
る。門脈域を取り込む様に増殖する例が多く,被膜形成は通常みられない。肝細胞癌に比し,
血管内に侵入することは少ない。癌が肝門部に近づくと神経周囲浸潤(写真63)の頻度が高く
なる。血管内や神経周囲に浸潤した肝内胆管癌は,腺腔を形成して発育する性状がある(写真64)。
高分化型腺癌
     種々の大きさの管腔構造を示し,乳頭状の増殖もみられる。腫瘍細胞の大小不同は軽度

か,乏しい。

中分化型腺癌
     腺腔形成に加え,コード状あるいは篩状の増生を示す成分が混在する。腫瘍細胞の大小不

同や核異型が目立つ。

低分化型腺癌
     腺腔構造が不明暸となり,コード状,小集団状の増生を示すが,腺腔形成もみられる。腫

瘍細胞や核の大小不同,多型性や核小体が目立つ。下記の特殊型の成分を部分的に認める例