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支持療法
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背 景
小児緩和ケアとは,「身体,精神,スピリット(霊性)への積極的かつ全人的なケア
であり,家族へのケアの提供も含まれる。小児緩和ケアは,疾患が診断されたときに始
まり,根治的な治療の有無に関わらず,継続的に提供される。医療従事者は子どもの身
体的,心理的,社会的な苦痛を適切に評価し,緩和しなければならない。効果的な緩和
ケアとは,家族も含めた幅広い多職種的な対応と地域における社会資源の有効な活用を
必要とする。必ずしも人材や社会資源が十分でなくても満足のいく緩和ケアを実践する
ことは不可能なことではない。緩和ケアは,三次医療機関でも,地域の診療所でも,そ
して子どもの自宅でも提供しうるものである」(WHO)と定義されている。
小児緩和ケアを提供するにあたり,成人とは異なる小児の特性,①生物学的特徴(小
児は常に身体的発育ならびに認知・知能・思考・情緒など心理社会的発達途上にある),
②社会的背景の相違(小児の絶対数が少ない,小児の闘病,療養,死への心情的衝撃が
大きい,小児は生物学的,経済的,社会的,法律的に家族に依存している),③小児が
んの疾患特性(希少かつ多様である,約80%が長期生存可能である一方小児の主要な
死因である,成人に比し進行期でも抗がん剤感受性が比較的保たれていることが多い)
など,を理解する必要がある。
解 説
小児緩和ケアは,診断当初(診断のための検査・処置ならびに腫瘍による疼痛管理,
がんと診断されたことへの不安への対応,教育や医療費,同胞や家族の問題など)から
患児の死後まで,全経過を通して,必要に応じ抗がん治療や生命維持治療と並行し,途
切れることなく継続して提供すべき医療である。決して終末期のみではない。提供すべ
き内容として,以下が挙げられる
1-7)
。
(1)症状管理:身体的,精神心理的,社会的,スピリチュアルな苦痛を相互に関連
しあう全人的苦痛としてとらえ,薬理学的・非薬理学的管理により軽減する。
(2)家族支援:親への支援(患児の治療方針決定への支援,同胞の育児への支援,
家庭の機能維持など),同胞への支援(年齢や発達に応じた説明など)
小児がん治療における苦痛緩和対策は何か
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小児がん患児が経験する苦痛を全人的に捉え軽減するための緩和ケアを,患児・家族の希望を
考慮した場所で,必要に応じ抗がん治療や生命維持治療と並行しながら,全経過を通じて提供
することを強く推奨する。
推奨グレード(推奨度・エビデンスレベル):1C
推奨