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急性リンパ性白血病 ALL

クリニカルクエスチョン

背 景

小児ALLの治療成績は飛躍的に向上し,80〜90%の患者で治癒が得られるように

なった。全体の成績を向上させつつ,短期・長期の合併症を軽減するためには,予後因
子に基づく層別化治療が重要である。層別化に必要な分類と検査について述べる。

解 説

小児ALLの治療はリスクに応じた層別化治療が行われる。層別化のために必要な検

査として,治療開始前に確認しておくべきものと開始後に確認すべき検査がある

1)

表面抗原による免疫学的分類で成熟B細胞性の形質を有したALLは,成熟B細胞性

リンパ腫の治療を行う(リンパ腫の項参照)。T細胞性ALLは,B前駆細胞性と同一
のプロトコールで治療する場合と別個のプロトコールで治療する場合とがある。いずれ
の場合もB前駆細胞性ALLの標準リスクよりも強化された治療を行う

1)

染色体・遺伝子検査でPh染色体,またはBCR-ABL融合遺伝子を有するPh染色体

陽性ALLは,チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)が有効であ
り,その他のALLとは別個のプロトコールでTKI併用化学療法を行う

2)

CQ6

参照)。

1歳未満の乳児ALLは,MLL遺伝子の再構成を高率に伴うなど生物学的に特徴的な

集団であること,薬剤投与量の設定や合併症対策に特別な配慮が必要であることから,
世界的にも1歳以上とは別のプロトコールで治療されることが一般的である

3)4)

。MLL

遺伝子の再構成が陰性の場合は標準的な化学療法,陽性の場合は強化された化学療法を
行う。MLL遺伝子の再構成陽性例に対する同種造血細胞移植(stem cell transplanta-
tion:SCT)適応についてはコンセンサスがないが,低月齢(6カ月未満)での発症例

小児ALLの治療方針の決定に必要な分類と検査は何か

CQ

1

治療開始前には年齢,白血球数,中枢神経系(central nervous system:CNS)および精
巣浸潤の有無を把握し,免疫学的分類,染色体・遺伝子異常などの検査を行うことを強く推奨
する。治療開始後の検査としては,初期治療反応性と寛解の有無を評価することを強く推奨す
る。初期治療反応性は,治療開始後8日目の末梢血芽球数や15日目の骨髄芽球割合等で判
定する。寛解後はフローサイトメトリー(flow cytometry:FCM)やPCR(polymerase 
chain reaction)を用いた微小残存病変(minimal residual disease:MRD)検査を行う
ことを推奨する。

 推奨グレード(推奨度・エビデンスレベル):1A 

推奨