サメタゾンの用量(→CQ5参照)については,第1世代の5—HT

3

受容体拮抗薬との2剤併

用では13.2~16.5 mgを静注(16~20 mgを経口)とされてきたが,アプレピタントとの
併用では,アプレピタントがCYP3A4を阻害することによりデキサメタゾンの濃度―時
間曲線下面積(area under the concentration—time curve;AUC)が増加するため,3剤
併用では9.9 mg静注(12 mg経口)に減量する。ただし,副腎皮質ステロイドが抗がん薬
として投与されるCHOP療法などではレジメン内のステロイドは減量してはならない。
アプレピタントの投与期間は3日間が推奨される。ホスアプレピタントはアプレピタン
トの水溶性を向上させたリン酸化プロドラッグであり,静脈内投与後に体内の脱リン酸
化酵素によって速やかに活性本体であるアプレピタントに変換される。ホスアプレピタ
ントはオンダンセトロン,デキサメタゾンとの3剤併用でアプレピタントとの同等性が
示されており

14)

,5—HT

3

受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下での抗がん薬投与30分

前,150 mgの単回使用が推奨される。ただし,副作用として注射部位痛/発赤/血栓性静
脈炎の頻度が高いことに留意すべきである。
 NCCNガイドライン 2015では,アプレピタントの代わりに多受容体作用抗精神病薬

(multi—acting receptor targeted antipsychotics;MARTA)のオランザピン(10 mg経口

投与,1~4日目)をパロノセトロンとデキサメタゾンとの3剤併用で用いるオプション
が新たに提示された。これは,シスプラチンとAC療法を含む高度リスク抗がん薬投与
に際し,オランザピンが,パロノセトロンとデキサメタゾン併用下においてアプレピタ
ントと同等であることが示された第Ⅲ相ランダム化比較試験の結果を受けている

15)

。し

かしながら,オランザピンはわが国ではエビデンスがなく保険適用外であること,使用
に際しての眠気,また禁忌として糖尿病があることには十分注意を要する。ほかの補助
薬としては,状況に応じてロラゼパムやH

2

受容体拮抗薬,またはプロトンポンプ阻害薬

を追加併用してもよい(→21頁,制吐薬治療のダイアグラム①参照)。

2
 基本的に5—HT

3

受容体拮抗薬とデキサメタゾン6.6~9.9 mgを静注(8~12 mgを経口)

の2剤併用とするが,一部の抗がん薬(カルボプラチン,イホスファミド,イリノテカ
ン,メトトレキサート等)を投与する場合にはアプレピタント125 mg経口投与もしくは
ホスアプレピタント150 mg静脈内投与の併用が推奨され,その際にはデキサメタゾン
を減量(静注:3.3~4.95 mg,経口:4~6 mg)する(→22頁,制吐薬治療のダイアグラム
②参照)。また,わが国では400例を超えるオキサリプラチン投与患者に対する第Ⅲ相ラ
ンダム化比較試験が行われ,5—HT

3

受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下において,ア

プレピタント/ホスアプレピタント群がコントロール群より全治療期間,特に遅発期の
悪心・嘔吐の制御に優れることが示された

16)

】2015年のASCO総会では,ホスアプレピタントの海外第Ⅲ相ランダム化比較試

験において,5—HT

3

受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用に対するホスアプレピタントの

上乗せ効果が報告されている

17)

37

CQ2