✚✚
背景・目的
抗がん薬の催吐性リスクは,高度,中等度,軽度,最小度の4段階に分類される。良
好な治療アドヒアランスを得て,がん治療を円滑に進めるためにも,催吐性リスクの適
正な評価と個々の症例に応じた予防的対処を行う必要がある。
✚✚
解説
抗がん薬投与後,数時間以内に起こり24時間以内に消失する急性嘔吐は,抗がん薬の
治療アドヒアランスを妨げる最も大きな要因の一つであり,その予防制吐効果の成否は
遅発性嘔吐の治療効果にも影響を及ぼす
1)
。したがって,特に催吐性リスクが高度およ
び中等度の抗がん薬投与に際しては,急性嘔吐を未然に防ぎ,さらに遅発性嘔吐の治療
反応性を良好に保つためにも,積極的な制吐薬の投与を行う必要がある。以下に急性嘔
吐の予防を目的として,抗がん薬投与前に行うべき対処を催吐性リスク別に概説する。
1
NK
1
受容体拮抗薬であるアプレピタント125 mg経口投与
2)
もしくはホスアプレピタン
ト150 mg静脈内投与と5—HT
3
受容体拮抗薬およびデキサメタゾン9.9 mg静注(12 mg
経口)の3剤併用が推奨される。第1世代の5—HT
3
受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2剤
併用に比べ,アプレピタントを加えた3剤を併用することで制吐作用の著しい改善が示
されている
3)4)
。第1世代の5—HT
3
受容体拮抗薬(→CQ4参照)は,単剤間の直接比較お
よびデキサメタゾン併用下での比較において,薬剤間またその投与経路によって効果に
大きな差はなく
5)~7)
,用量や投与回数の影響を受けないことから
8)~11)
,抗がん薬投与開
始前に必要量を単回投与とする。第2世代5—HT
3
受容体拮抗薬のパロノセトロンは,単
剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,急性嘔吐の予防効果は
他薬剤と同等であるが,遅発性嘔吐の予防において優れている
12)13)
(→CQ3参照)。デキ
36
推奨グレード
A
5HT
3
A
5HT
3
CQ
2
がん薬物療法後の急性の悪心・嘔吐を
どのように予防するか