31
第
1
章
第
2
章
第
3
章
第
4
章
第
5
章
第
6
章
第
7
章
第
8
章
第
9
章
第
10
章
第
11
章
第
12
章
4 温度効果
●
がん細胞は42.5℃以上になると死滅するといわれている。42℃以上では放射線感受性が高まる。
●
正常組織は細胞の温度が上昇すると,血管が拡張し血流量が増加して細胞の温度を下げる作用が働く
が,腫瘍組織の血管にはその作用が起こらない。そのため,がん細胞のみを温めることが可能である。
●
腫瘍組織は血流が悪いため酸素分圧(PO
2
)が低下し,低酸素細胞となる。すると,乳酸の生成が促進
されるため,低pHになりやすい。
●
低pH細胞は温度感受性が高いため,効率よく温度を上昇させることができる。さらに,血流が低下
すると栄養がいきにくくなり,腫瘍細胞の栄養が不十分となる。
●
温熱と放射線を同時に併用することにより,放射線によるDNA一本鎖切断の回復や染色体異常の回
復が温熱により抑制され,増感作用を示す。
▲
正常組織と腫瘍組織の温まり方の違い
熱
熱
熱
熱
熱
熱
熱
熱
正常組織
腫瘍組織
温めると
血管拡張
放 熱
血管が拡張しない
温めると
さらに,
血流低下によって
※腫瘍血管は脆弱性であり,温熱によって腫瘍血管は圧排・出血・閉塞を起こす。
熱がこもる
温まりにくい
温まりやすい
pH↓
酸性細胞
PO
2
↓
低酸素細胞
嫌気性解糖
栄養不十分
(低栄養)
▲
温熱と放射線の感受性と細胞周期の関係
M
G
1
S
G
2
M
温熱
放射線
高
低
温熱感受性
高
低
放射線感受性
感受性の差
●
細胞周期でみると,放射線と
温熱では感受性が異なる。
●
温熱ではG
1
期で感受性が低
く,M期,S期で感受性が高
いのがわかる。
●
X線はS期後半で感受性が低
いため,放射線と温熱を併用
することで放射線感受性の低
いS期後半の部分を補うこと
ができる。