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一般的な放射線治療であるX線治療とBNCTの比較を図と表にまとめた。

 X線治療とBNCTとの比較

X線治療

X線で治療

BNCT

中性子と反応して生成し

たα粒子とLi反跳核で治療

中性子

コリメータ

腫瘍

項 目

X線治療

BNCT

放射線発生装置

 

● 

加速器にはリニアックを用いる。

 

● 

エネルギーは約6~20 MV程度であるた

め,装置は小型であり,遮蔽も容易であ

る。

 

● 

中性子発生のために原子炉が必要である。

 

● 

原子炉を用いるため,基本的には病院併設が

困難である。しかし,現在開発が進められてい

る加速器型BNCT(☞

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)では病院

併設が可能である。

照射期間

 

● 

SRSなどの特殊例を除き,通常の多分割照

射を行うと仮定すると,疾患によるが1

日1回約2 Gyを週5回,20~40回程度

に分けて治療を行う。

 

● 

理由として,X線は低LETであるため正

常細胞の亜致死障害の回復が期待でき

る。つまり,正常組織を守るためである。

 

● 

BNCTでは,ほとんどの場合,1回のみで治

療を終了する。

 

● 

理由として,治療に用いられるα粒子およびLi

反跳核は高LET放射線のため正常細胞の亜致

死障害の回復が期待できないため。また,

BNCTではがん細胞へ効果的に線量を付与で

きることも大きな要因である。

照射方法

 

● 

X線の透過力が高いため,1門では皮膚表

面に高線量を与えてしまう。そのため,多

方向から照射することにより影響を分散

させ,身体の深部にある腫瘍に対して効

率的に線量を付与する。

 

● 

多方向からの照射であることにより,正

常組織を含む広範囲に放射線が照射され

てしまう。

 

● 

BNCTでは,腫瘍細胞に取り込まれた

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B化

合物と熱中性子の反応により,腫瘍細胞に限

局した治療が可能である。

 

● 

熱中性子は生体構成物質との核反応断面積が

小さいために,正常組織への影響は少ない。

 

● 

照射する中性子が熱中性子メインの場合,減

衰により体内深部病変へ十分な線量を与える

ことができないことがある。

 

● 

そのため,基本的には皮膚や比較的浅い腫瘍

に適応となる。

 

● 

この方法は侵襲的であるため,解消する方法

として,熱外中性子をメインに照射する手法

が挙げられる。