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電離箱では,電離電荷を測定する。

しかし,実際の計測時は水吸収線量校正

定数N

D, W, Q

0

が与えられた基準条件とは

異なり,電離箱の表示値も正確ではない
ため,補正が必要となる。

電離箱の表示値には,「補正後の表示値

(M

Q

)」と「補正前の表示値(M

raw

)」が

ある。

「補正後の表示値(M

Q

)」は,「補正前の

表示値(M

raw

)」に4つの補正係数(k

TP

k

pol

・k

s

・k

elec

)を乗じて求める。

  5 電離箱を用いた線量計算

温度気圧補正係数(k

TP

)とは,通気性の

ある電離箱について,電離空洞内の空気
の質量が温度(T)および気圧(P)によ
って変化することに対する補正係数。

基準条件は, 「T

0

=22.0 ℃」「P

0

=101.33

kPa」である。

実際,電離空洞内の空気の温度(T)と

気圧(P)は測定できない。

そのため,温度(T)は水ファントムの

水温,気圧(P)は大気中の気圧を採用
し,k

TP

を求める。

 電離箱の表示値

補正後の表示値

    補正前の表示値

M

Q

=M─

raw

×k

TP

×k

pol

×k

s

×k

elec

4つの補正係数

k

TP

:温度気圧補正係数

k

pol

:極性効果補正係数

k

s

:イオン再結合補正係数

k

elec

:電位計校正定数

 温度気圧補正係数(k

TP

k

TP

(273.2+T )

(273.2+T

0

P

0

P

(273.2+T )

(273.2+22.0)

101.33

P

基準条件:22.0 ℃ 101.33 kPa

 T :計測時の気温

 P :計測時の気圧

 T

0

:基準条件の気温(=22.0 ℃)

 P

0

:基準条件の気圧(=101.33 kPa)

イオン再結合補正係数(k

s

)とは,照射

によって電離空洞内に生じたイオン対が
再結合によって失われることに対する補
正係数である。

パルス放射線では,2点電圧法が推奨さ

れる。

2点電圧法では,電離箱に対して「印加

電圧V

1

(通常の電圧)」と「印加電圧

V

2

V

1

2

」を印加し,その際に得られ

た表示値「M

1

」と「M

2

」を用いてk

s

求める。

なお,印加電圧を変更する際は,表示値

が安定するまで時間を空けた方がよい。

 イオン再結合補正係数(k

s

) 

k

s

=a

0

+a

1

M

1

M

2

+a

2

M

1

M

2

2

パルス放射線における2点電圧法

a

0

・a

1

・a

2

は,V

1

とV

2

の比

V

1

V

2

で決められた定数。

【例】

V

1

V

2

=2.0の場合

a

0

=2.337, a

1

=−3.636, a

2

=2.299

①電荷量(電離量)を求める