CQ 3-3

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IHC法とFISH法の検査精度については,NSABP︲B31試験,N︲9831試験にお

いて,IHC法でHER2陽性とされてトラスツズマブ治療に登録された乳癌患者の
18~26%が中央検査施設における再検査により,蛋白質過剰発現も遺伝子増幅も
認められなかった,というデータがある

1, 2)

。これに対しFISH法の観察者間再現

性は極めて高いと報告されている

3)

。最近では,精度管理の概念が普及するにつ

れて偽陰性,偽陽性症例の頻度は減少傾向にある

4, 5)

。また,IHC法とFISH法の

結果は,用いる組織が新鮮凍結材料であれば,非常によく一致することが知られ
ているが,ホルマリン固定パラフィン包埋することでこの両者の結果に食い違い
が起こり得るとされ,FISH法の結果を重視するという意見もある

6)

。また同一浸

潤癌巣内にも異なる組織型(混合癌)や組織学的悪性度成分がみられ,HER2発
現状況に不均一性(heterogeneity)が存在することも,不一致の一因と推定され
ている

7︲9)

。低レベルのISH陽性例(例えば,HER2/CEP17比=2.0だが17番染

色体セントロメア領域のみの欠失により,癌細胞あたりの平均HER2遺伝子コピ
ー数は2.0しかなく,HER2 IHCでは発現陰性の例),一方で,IHCスコア3+だ
がISH陰性(HER2/CEP17比2.0未満かつ癌細胞あたりのHER2遺伝子コピー
数6.0未満の例など)もごく稀に存在する。

検索式・参考にした二次資料  

PubMedで,breast cancer, human epidermal growth factor receptor type 2, HER2, 

immunohistochemistry, In Situ Hybridization, FISHのキーワードを用いて検索した。
またASCO/CAPガイドライン2013年版を参考とした。ハンドサーチで検索した重要
文献も追加した。

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通常,IHC法の検査結果よりもISH法の検査の方が正確で,再現性も高
いことが示されている。標本作製過程や検査過程が正しく行われていな
かった場合,IHC法やISH法の結果が偽陰性になる可能性がある。標本
作製,検査自体,判定自体が正しく行われていた場合,IHC法とISH法の
検査結果不一致は腫瘍内不均一性,低レベルのISH陽性例,IHCスコア
3+のISH法陰性例などに由来し得る。