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. Analytical

2013年のASCO/CAPガイドラインのIHC法に関する主要な変更点として①

IHCスコア3+の判定基準が,強い完全な全周性の細胞膜陽性を示す癌細胞の比
率「>30%」から,「>10%」に引き下げられた。②従来はスコア0(陰性)と判
定されていた,「完全な全周性の細胞膜陽性癌細胞が10%以下」の症例はIHCス
コア2+と定義された。③従来はIHCスコア1+と判定されていた不完全な全周
性の膜染色が>10%の癌細胞に認められた症例の判定がスコア2+にupgradeさ
れた。④技術的問題で検査が実施できない,あるいは陽性,equivocal,陰性が判
定できない場合には判定不能と報告する,である。

ISH法に関する主な変更点は,①HER2 ISH陽性基準は,HER2/CEP17比(あ

るいはHER2/CEN17比)が,従来の「2.2を超える」から「2.0以上」に変更さ
れ,またこれらの比が,2.0未満でも,癌細胞あたり平均HER2遺伝子コピー数
が6.0以上のものが新たにISH陽性と定義された。②HER2/CEP17比(あるい
はHER2/CEN17比)が2.0未満でも,癌細胞あたり平均HER2遺伝子コピー数
が4.0以上,6.0未満の場合はequivocalと定義された,である。HER2蛋白過剰
発現は,癌細胞あたりの平均HER2/CEP17比(あるいはHER2/CEN17比)2.0
以上,平均HER2遺伝子コピー数(6.0以上),のどちらの基準とも相関すること
が示されている。一方,乳癌には癌細胞あたりの平均17番染色体CEP17(ある
いはCEN17)コピー数が3.0以上のpolysomy 17の例が10~49%に見られること
が知られている

5)

。Polysomy 17の例の場合,平均HER2遺伝子コピー数6.0以

上の乳癌であってもHER2/CEP17比は2.0未満となり得る。このような乳癌を
持つ患者では,有効であるはずの抗HER2療法を受ける機会が失われることが危
惧されており,一部の研究者からは,平均HER2遺伝子コピー数を報告すべき,
あるいはHER2/CEP17比と併記すべき,との主張もなされていた

5-7)

。ASCO/

CAPガイドライン2013年版ではHER2/CEP17比とともに平均HER2遺伝子コ
ピー数も加味された判定となっている。

IHC法,ISH法の判定がequivocalとなった場合は,IHCとISHを交代させた

リフレックステスト,ISH法では代替17番染色体プローブを用いたISH法の実
施,などが勧められている。ASCO/CAPガイドライン2013年版では,再検査を
行っても再度判定がequivocalとなる症例もあり得,その場合は総合的に判断し,
陽性か否かを判定することになる。しかしながら,その明確な判断根拠は示され
ていない。ガイドラインのカットオフ値に関するさまざまな基準は,改訂ごとの
主な変更点の対象となっており,注意が必要である。