各 論

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A.浸潤性星細胞腫

A.浸潤性星細胞腫

(diffusely infiltrating astrocytoma)

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びまん性星細胞腫

(diffuse astrocytoma)

WHO grade

【臨床像】

浸潤性星細胞腫は代表的な神経上皮性腫瘍であり,脳腫瘍のなかでも頻度が高い。主な組織

型は,びまん性星細胞腫(WHO gradeⅡ),退形成性星細胞腫(gradeⅢ),膠芽腫(gradeⅣ)で
ある。びまん性星細胞腫は,脳実質内で浸潤性増殖を示す低悪性度の星細胞系腫瘍である。成
人の大脳半球に好発し,小児にも発生する。経年的に悪性転化を示すことが多い。

組織亜型として,原線維性星細胞腫(fibrillary astrocytoma),原形質性星細胞腫(protoplasmic 

astrocytoma),肥胖細胞性星細胞腫(gemistocytic astrocytoma)がある。このうち,肥胖細胞
性星細胞腫は他の2型よりも予後不良とされている。

【病理組織像】

腫瘍組織は正常の脳実質より細胞密度が高く,軽度異型を示す核と好酸性の細胞質をもち,

繊細な突起を伸ばす腫瘍細胞がびまん性に増殖している。核分裂像はほとんど認められない。
基質には微小嚢胞変性を伴うことが多い。免疫組織化学的には,星細胞系腫瘍細胞の代表的マー
カーであるGFAPが陽性となる。Ki-67(MIB-1)標識率は5%未満である。

【細胞像】

細胞密度は軽度〜中等度で,流れるように配列する線維状基質を背景に,繊細なクロマチン

を有する楕円形核が散在する。核は正常の星細胞の核より1.5〜2倍程度大きく,軽度の大小不
同とクロマチンの軽度増加を示す。腫瘍細胞には裸核状細胞と好酸性細胞質および細胞質突起
を有する細胞とがある。細胞質突起は,反応性星細胞よりも太く不規則である(

図11,12

)。肥

胖細胞性星細胞腫では,偏在性好酸性の豊富な細胞質を有するgemistocytic cellが明瞭となる。

【鑑別診断・ピットフォール】

反応性アストロサイト(reactive astrocyte)増生

細胞は比較的均等に分布し,放射状の長い細胞突起を伸ばす。

2

 退形成性星細胞腫

(anaplastic astrocytoma)

WHO grade

【臨床像】

退形成性星細胞腫は,びまん性星細胞腫の悪性化,あるいはde novoに発生し,膠芽腫へ悪

性転化することが多い。成人に多く,男性にやや多い。術中迅速病理診断で高悪性度星細胞系
腫瘍(退形成性星細胞腫ないし膠芽腫)と診断された症例では,術中化学療法剤の脳内留置が施
行されることがある。

【病理組織像】

びまん性星細胞腫と比較して,細胞密度,核のクロマチン量,N/C比等が増加しており,