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副腎
各論
各 論
A.副腎皮質病変
副腎皮質病変で細胞診の適応になり得るのは,良性の副腎皮質腺腫と悪性の副腎皮質癌であ
る。組織学的な両者の鑑別方法として,他臓器の癌で用いられるような細胞異型,浸潤,核分
裂像亢進などは必ずしも有効とはいえない。両者の鑑別には,適切な病変の肉眼的観察と切り
出し,さらには後述のごとく正確なWeiss criteriaの評価が極めて重要である。
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副腎皮質腺腫
(adrenal cortical adenoma)
【疾患概念】
副腎皮質に原発する良性腫瘍である。
【診断のポイント】
•
類円形核とライトグリーン好性の細胞質を有する腫瘍細胞が混在する(
図1,2
)。
•
良好な結合性を有する(
図1,2
)。
•
核の軽度クロマチン増量と大小不同がみられる(
図1,2
)。
•
中心性ないし偏在性の核を有する(
図2
)。
【臨床像】
良性の副腎皮質腫瘍である。機能性腺腫の場合,副腎皮質ホルモンの過剰産生により,原発
性アルドステロン症やCushing症候群の原因となる。非機能性腺腫の場合,画像的にみつか
ることが多い。
【病理組織像】
腫瘍部は,類円形の核と明るい細胞質を有する淡明細胞,類円形核と好酸性の細胞質を有す
る緻密細胞を種々の程度に混在している。一般に,原発性アルドステロン症に生じる副腎皮質
腺腫では前者の割合が多く,またときに好酸性同心円状の構造を示す細胞質内封入体(スピロ
ノラクトン小体)が認められることがある。後者では緻密細胞の割合が多い。ほか,核内細胞
質封入体,明瞭な核小体,核の大小不同,クロマチンの軽度増量がみられる。被膜形成は不明
瞭なことが多い。
【細胞像】
細胞の出現様相は散在性で,多くは裸核状を呈する。核は円形で,大小不同や2核細胞がみ
られることがある。核の位置は中心性ないし偏在性である。核クロマチンは増量し,細〜粗顆
粒状で均等に分布する。また,核小体は明瞭で,1,2個認められる。細胞質内には,リポフ
スチン顆粒が認められることもある。
【細胞診の判定区分】
疑陽性(良悪判定困難)
【鑑別診断・ピットフォール】
副腎皮質癌の項(次頁)参照のこと。